確率収束

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【定義】 $X_1, X_2, \dots, X$ を確率変数とする。 確率変数列 $\{ X_n \}$ が $X$ に確率収束するとは、任意の $\varepsilon > 0$ に対して \[ \lim_{n \to \infty} P(|X_n - X| > \varepsilon) = 0 \] が成り立つことをいう。なお、定数も確率変数とみなすので $X$ は定数であってもよい。

授業で扱った大数の弱法則は、サイズ $n$ の標本平均 $T_n$ が、母平均 $\mu$ に確率収束することを主張している。 このページでは、大数の弱法則以外の例を用いて、確率収束に関する問題を考える。

【問題1】$n$ 個の公平なサイコロを同時に投げる。 $n$ 個の出目の最大値を $X_n$ とするとき、$X_n$ が $6$ に確率収束することを示せ。 簡単のため、証明で用いる「任意の $\varepsilon > 0$ 」は $0 < \varepsilon < 1$ を満たすとしてよい。  

【解答】任意の $\varepsilon$ を $0 < \varepsilon < 1$ を満たすようにとる。 $X_n$ の取り得る値は $1,2,3,4,5,6$ であるから、$ |X_n - 6| > \varepsilon$ であることと $X_n \neq 6$ であることは同値である。 そこで、$X_n \neq 6$ である確率を計算する。 これは $n$ 個すべての出目が $6$ でない確率であるから \[ P(X_n \neq 6) = \left( \frac{5}{6} \right)^n \] である。よって、 \[ \lim_{n \to \infty} P(|X_n - 6| > \varepsilon) = \lim_{n \to \infty} P(X_n \neq 6) = \lim_{n \to \infty} \left( \frac{5}{6} \right)^n = 0 \] となり、$X_n$ が $6$ に確率収束することが示された。
 
【補足】$\varepsilon \geq 1$ である場合は、より小さい $\delta \in (0, 1)$ を取り直せばよい。 実際、 \[ |X_n - 6| > \varepsilon \quad \Longrightarrow \quad |X_n - 6| > \delta \] であるから \[ P(|X_n - 6| > \varepsilon) \leq P(|X_n - 6| > \delta) \] となり、結局 $0 < \varepsilon < 1$ の場合のみ考察すれば十分である。

【問題2】公平なサイコロをひとつ投げ、その出目を $X$ とする。 各 $n = 1,2, \dots$ に対して、確率変数 $Y_n$ を \[ P(Y_n = n) = \frac{1}{n}, \quad P(Y_n = 0) = 1 - \frac{1}{n} \] で定め、$X_n := X + Y_n$ とする。
[1] $X_n$ が $X$ に確率収束することを示せ。
[2] $E[X_n] = E[X]$ が成り立つか調べよ。  

【解答】[1] 任意の $\varepsilon > 0$ をとる。 $n \to \infty$ を考えるので、$n > \varepsilon$ としてよい。 $Y_n$ が $0$ または $n$ しか取らないことに注意すると、 \[ \lim_{n \to \infty} P(|X_n - X| > \varepsilon) = \lim_{n \to \infty} P(Y_n > \varepsilon) = \lim_{n \to \infty} P(Y_n = n) = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0 \] と計算できるので $X_n$ は $X$ に確率収束する。
[2] $E[Y_n] = 1$ である(確かめよ)から \[ E[X_n] = E[X + Y_n] = E[X] + E[Y_n] = E[X] + 1 \neq E[X] \] となる。よって、いつも $E[X_n] \neq E[X]$ である。
 
【補足】[2]より、確率収束は期待値を保存しないことが分かる。また、この結果はサイコロに限らず、任意の確率変数 $X$ に対して同様に成り立つ。