母平均の差の検定(対応のある2標本)

[Tips] 2標本に対応がある場合、母平均の差に関する検定は、本質的には「変化量」に対する母平均の検定となり、すでに扱った「母平均の検定(母分散未知)」と同様の問題に帰着される。

ある企業では、ユーザーインターフェース(以下UI、意味は下記を参照)の改良が作業効率に与える影響を調べるため、 6人の被験者に対して同じ作業を旧UIと新UIの両方で行わせ、作業にかかった時間(単位:秒)を以下のように測定した:

被験者No.123456
旧UI
新UI

この結果から、新UIにより作業時間が変化したといえるかを、有意水準 $5\%$ で検定せよ。 ただし、作業時間の差は正規分布に従うとする。  

作業時間の差(旧UI $-$ 新UI)を $D$ とし、その平均値を $\mu_D$ とする。
帰無仮説 $H_0$ と対立仮説 $H_1$ をそれぞれ次のように設定する:
  $H_0: \mu_D = 0$
  $H_1: \mu_D \neq 0$
作業時間の差の不偏分散を $U^2$ として、統計量 \[ T := \frac{\overline{D} - \mu_D}{U / \sqrt{n}} \] が自由度 $5$ の $t$ 分布 $t_5$ に従うことを利用して検定を行う。
有意水準 $5\%$ より、棄却域は $|t| > 2.57058$ である。
作業時間の差の観測値は であるから、帰無仮説 $H_0$ のもとで実現値は となり、

[Tips] ユーザーインターフェース(UI)とは、ユーザーが製品やサービスを利用する際に関わるすべての接点を指すが、ここではより簡単に「操作画面」と考えてよい。 みなさんも、スマートフォンのアプリがアップデートされて「操作画面」が急に変わり、使いづらくなったり、慣れるまで戸惑ったりした経験があるだろう。 そのようなとき、私たちは「あのアプリはUIが変わったね」などと言ったりする。